研究テーマ
Research News Details
未来を拓く人間脳科学
超高齢社会・災害の多発・スマート社会。環境や社会の変化は我々の生活や価値観をどう変えるのでしょうか。認知・脳科学の視点から、人間らしい生き方、技術や社会のあり方について未来への提言を目指します。
Research News Details
超高齢社会・災害の多発・スマート社会。環境や社会の変化は我々の生活や価値観をどう変えるのでしょうか。認知・脳科学の視点から、人間らしい生き方、技術や社会のあり方について未来への提言を目指します。
ゴミ処理場など忌避施設の建設に対する住民の反応、いわゆるNIMBY ("not in my back yard") 問題は、自分にとって最悪の結果を防ぐための個人の決断が公共の利益を損なうという社会的ジレンマであると同時に、「多数派か少数派か」の判断が求められる道徳的ジレンマの一種ともみなすことができます。本研究では忌避施設の立地によって参加者自身の最悪の結果が予測できる内集団条件と、最悪の結果が生じる可能性のない外集団条件を設定した上で、「多数者か少数者か」の判断に関わる認知神経科学的プロセスを機能的MRIを用いて検討しました。その結果、最悪の結果に対する注意に関連する右角回の活動は内集団・外集団で差がないのに対し、扁桃体の活動は内集団条件で有意に高く、腹内側前頭前野も内集団条件でより強く活動する傾向が認められました。これらの結果から、忌避施設問題の文脈に置かれた人々は、内集団のみならず外集団の最悪の結果にも注意を向けること、内集団条件では多数者を優先する功利的判断への嫌悪を伴いながら、統合的な判断を導出する認知プロセスが作動していることが神経科学的に示唆されました。
本研究は関西学院大学、名桜大学、関東学院大学、東北大学の学際的共同研究として、加齢医学研究所脳MRIセンターのMRI装置を用いて行われ、Social Neuroscience誌に掲載されました。(大場)
https://doi.org/10.1080/17470919.2023.2280060